この記事では前鋸筋と呼ばれている肩甲骨と肋骨を繋ぐ筋肉をご紹介させて頂きます。
題名にも書かせて頂きましたが、肩の不調や猫背に直接関連してきます。
更に、肩の上に構成される首や顎にも影響を与え、肩こりや顎関節症に発展する可能性もあります。
筋トレをする上で筋肉のイメージは大切だとされています。
イメージの有無で、イメージした方がより収縮率が上がったと報告している研究もあるくらいです。
概要
前鋸筋 serratus anterior
大きな筋で胸郭の外側部に位置し、腋窩の内壁を構成する。この筋の起始部は、ノコギリの歯状の外観を呈するので鋸筋と呼ばれている。
(渡辺 2010: 240)
【起始】(筋肉が始まる所)
第1~8肋骨。9、10肋骨にも起始を持つ人も。他、これら肋間の間の肋間筋や筋膜にも。
【停止】(筋肉が最後に付着する所)
肩甲骨の内側縁の前面。
赤の部分で始まり、肩甲骨の内側を潜り込んでいくように走行します。
前方から内側を通って走行した前鋸筋は肩甲骨な内側縁に停止します。
図では見えないとしていますが、第6~8肋骨あたりは少しだけ見える位置にある場合もあります。
前鋸筋を使用する場面
どの様な場面で使用される筋肉でしょうか。
少し特殊でイメージしにくいと思いますので具体的な例でご紹介させて頂きます。
腕を挙げる
腕を伸ばし、それが長ければ長いほど重くなります。(モーメント・アームと言います)
勿論、その先で何かを持てばその重りもプラスされます。
腕が肩から外れない様にしているのは何でしょうか。接着剤?
違いますね。そうです、筋肉です!
その中の1つがこの前鋸筋になります。
特に、肩甲骨の下の尖がった部分(下角)を内から引っ付けようとしてくれます。
※「下角」は後に翼状肩甲骨の図解で出てきます。
腕を伸ばして物を取りに行く
物を取ろうとした時、腕を挙げます。
先程の「腕を挙げる」でご紹介した通り、その時点でも補助的に働いています。
腕を挙げた更に遠くの物を取ろうとした時、腕を伸ばした状態で肩を前方に突き出すと思います。
その時によりこの筋肉が発揮されます。
腕立て伏せ
もう1つは腕立てをし、肘が伸びきった時に更に身体を持ち上げようとする時に発揮します。
肘が曲がっている時点でも固定としては働いています。
翼状肩甲骨(前鋸筋が働かない時の異常)
前鋸筋は腕を挙げたり、何かを押し返したりする動作で働くとご紹介しました。
この筋肉が働かなくなると、肩甲骨の固定はできなくなり負けてしまいます。
その負けた異常な状態を翼状肩甲骨(Winging)と言います。
翼状肩甲骨の実際の画像
実際に知り合いが強い翼状肩甲骨であったので載せさせて頂きます。
ここまでくるとかなり重度です。
左は何もしていません。
右手に重りを持って挙上から下げている最中です。
何もしていない時点から浮き上がっているのでトレーニング必須の状態です。
次の方もかなり重度です。
四つ這いで静止状態で浮き上がってしまっています。
肩甲骨を前鋸筋が固定できず負けた状態です。
四つ這いの時点でここまで浮き上がってしまっています。
もっと負荷量が少ない簡単なものからのトレーニングが必要です。
翼状肩甲骨になってしまったら何をしたらいい?
翼状肩甲骨になってしまった時点でそれなりに弱化は進んでいると思います。
日常生活では首や肩に痛みや怠さが出始めているかもしれません。
まずはここの記事で紹介している簡単なものから開始してみて下さい。
まとめ
肩甲骨と肋骨を繋ぐ前鋸筋という筋肉についてご紹介させて頂きました。
この筋肉は腕を挙げたり、押し返したりするのに必要となる筋肉です。
弱ってしまうと翼状肩甲骨という異常な状態になってしまう事をご紹介させて頂きました。
これに対して簡単に出来るトレーニングの記事をリンクしています。
もし翼状肩甲骨で首や肩に痛みがある方はそれから実施してみてはどうでしょうか。
参考文献
- Donald A.Neumann(原著),嶋田智明、平田総一郎(監訳),筋骨格系のキネシオロジー,医歯薬出版株式会社,2010,618p
- 渡辺正仁.理学療法士・作業療法士・言語聴覚士のための解剖学,廣川書店,2010,396p
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